通信制高校で高卒認定を取ることもできる?
通信制高校を選択する理由のひとつに「高卒認定を取る」というものがあります。卒業さえすれば高等学校卒業資格を得られる通信制高校ですが、一方であえて高卒認定を目指すコースもあるのです。
高卒認定とは
「高認」などと略されることもある高卒認定は、正しくは「高等学校卒業程度認定試験」といいます。「高等学校卒業と同等以上の学力を有する」ことを認定する試験のことです。
高卒認定は平成17年度から文部科学省によって実施されています。それ以前は大検、正式には「大学入学資格検定」と呼ばれていました。
何かしらの理由で高校に進学できなかった人、不登校などで出席日数が足りずに高校を卒業できなかった人でも、高卒認定に合格すれば大学入学資格を取得することができます。
意外と難しい高卒認定
高卒認定はマークシート方式で、高校基礎レベルの問題が出題されます。各科目100点満点中の40点を取得すれば合格ラインです。
全14科目がありますが、そのうち高校で履修した科目、英検などの技能検定試験合格で免除される科目もあり、人によって1科目~10科目を受験することになります。
1科目ごとならば合格者は80%ほどと高い合格率が見られるものの、すべての科目において合格点をクリアして高卒認定を手にできる人は全体のおよそ40%ほどしかいません。じつは結構大変な高卒認定試験なのです。
通信制高校の高卒認定コースを利用する
自学自習だけで合格するのは、なかなか難しいと思われる高卒認定。たとえば、通信制高校の高卒認定コースを活用するというのもひとつの方法です。
高卒認定に特化した通信高校の一覧を見てみると、数多くの学校があり、その多くが全国47都道府県からの生徒を受け入れていることがわかります。通学コースという形態も選べる通信制高校もあり、学園生活をエンジョイしたい人にもおすすめです。もちろん、一般的な通信コースもあります。
いずれにせよ、通信制高校の高卒認定コースを利用すれば、自分1人で学習していて理解できなかった部分を教えてもらえます。また、試験の傾向や勉強方法など合格に向けてさまざまなサポート体制が整っていることが特長です。通信制高校を利用すれば、高卒認定に一歩近づくといっても過言ではありません。
高卒認定と高卒資格は違う
ここでひとつ注意したいのは、高認は高卒とは違うという点です。高卒認定に合格しても高卒資格を得るわけではありません。
したがって、もし大学に進学しなければ、最終学歴は高卒ではなく中卒となります。大検よりは活用範囲が増え、検定試験や就職試験で使えるようになった高認ですが、大学進学などの予定がなく「最終学歴が中卒なのはちょっと……」という人には、心もとない資格ともいえるでしょう。しかし、通信制高校で高認に向けた勉強をしていれば「やっぱり、高卒資格も欲しい」となった場合も、相談に応じてもらえるので安心です。
もちろん「必ず大学に進学する」という強い意志があるならば、高認でも何ら問題ないでしょう。モチベーションを維持するためにも、通信制高校の高卒認定コースで勉強してみてはいかがでしょうか。
高卒認定がアピールになることもある!
高卒認定を取得しただけでは、最終学歴は「中卒」ですし、履歴書には「高卒」ではなく「高卒認定取得」と書かなければいけません。それを不安に思う人もいるかもしれませんが、就職活動で有利に働くこともあります。
当然、面接官は「なぜ、高卒認定なのか?」という点を質問してくるでしょう。その時、不登校や高校中退などを経験しながらも、そこからどう立ち直って高卒認定をもぎ取ったかは、印象的なアピールにもなるはずです。
実際に大学に進学しなくても、高卒認定をひとつの個性として堂々と面接官に伝えて見事内定を勝ち取っている人もいます。挫折を経験し、打たれ強い人材を求めている企業も少なくない昨今、挑んでみる価値もあるのではないでしょうか。
通信制高校なら「やりたいこと」と両立できる?
一方「学校の勉強以外にやりたいことがある」というのを理由に通信制高校を選択する人もいます。10代のうちに自分のやりたいことが明確に決まるというのはなかなかないことです。もし、見つけたならば、通信制高校を活用して思い切り没頭するのも良いでしょう。
通信制高校なら「やりたいこと」を優先できる
スポーツ、音楽、芸能活動など、すでに自分の「やりたいこと」「進みたい道」を明確に持っている人は、学校の授業に出席できない日がどうしても多くなりがちです。
とくにトップアスリートとして活躍している選手などは試合が重なるシーズンはなかなか学校に行くことも難しいものです。また、ピアノやヴァイオリンなどの音楽関係の道を志している人はコンクールにチャレンジしなければいけません。レッスンに忙しく学校の定期テストの勉強どころではないというのが実情でしょう。
また、すでに芸能活動をしていたり、芸能界に入ることを目標としているならば、やはり仕事やレッスンで学校の授業に出られない日も多くなりがちです。全日制はもちろん、定時制でもいつも決まった時間に通学するというのは難しいのではないでしょうか。
しかし、通信制高校ならば、やりたいことの合間に勉強をすることが可能です。スクーリングと呼ばれる登校日の少ない学校を選択すれば、ほとんど学校に通わずに卒業することもできます。
通信制高校を卒業するのに必要な条件
通信制高校を卒業するのに必要な条件は「在籍期間3年以上」「74単位の習得」「特別活動30単位の取得」この3つだけです。これらをどう実現するかは、個々人の自主性と計画性にまかされています。
在籍期間3年以上
通信制高校を卒業するには、少なくとも3年間は在籍する必要があります。ただし、全日制高校、定時制高校から編入・転入した場合には、前の学校の在籍期間も含まれます。
通信制高校の場合、3年で卒業する人はけっして多くありません。ほとんどの人が4年以上かけて卒業しています。しかし、努力次第では3年で卒業することも不可能ではありません。
74単位の取得
通信制高校では自宅学習、レポート提出、スクーリング、テストを繰り返しながら、卒業に必要な74単位を取得していきます。自宅学習は、最近ではインターネットを介して配信される動画教材が利用されることも少なくありません。レポート提出もメールなどのやりとりがほとんどで、かつてのように郵送形式は少なくなっています。
ただ、レポート提出が滞ったり、スクーリングの欠席が続くと単位認定試験を受けられなくなるので注意しましょう。
特別活動30単位の取得
特別活動とはホームルーム、体育祭、修学旅行などの行事のことです。これらに3年間で少なくとも30単位参加しなくてはいけません。
ただし、スクーリングが年に1回のみの学校では、その日に集中して特別活動単位を取得できるようになっています。こういった、いかにも学校らしい行事が苦手だった人も、登校日の少ない通信制高校を選択すればあまり心配することもないでしょう。
専門的なことを学びたいから通信制高校にする!
通信制高校の中には、全日制高校、定時制高校にはないユニークな授業を展開しているところも少なくありません。より専門的なことを学びたい人にとっても、通信制高校はおすすめなのです。
高卒資格だけが目標ではない
これまで、通信制高校といえば何らかの理由で学校に通うのが難しい生徒が高卒資格を得るために利用することが大半でした。しかし、最近では「将来の仕事に役立つ資格取得をしたい」と希望して、あえて通信制高校を選択する生徒も増えています。
なぜならば、通信制高校は系列の大学、専門学校などと連携し、全日制高校、定時制高校にはない専門的な授業を受けられるようになっているところも多いからです。
全日制高校、定時制高校などと比較して授業時間の縛りがないからこそ、多彩なカリキュラムを組める、通信制高校のメリットともいえるでしょう。
通信制高校で受けられる専門的な授業
通信制高校のなかには、次のような専門的な授業を受けられるところもあります。
美容関連
美容、ヘアメイク、ネイルなどを学べる通信制高校もあります。たとえば、通常の通信制高校とともに、提携している美容学校の通信課程をダブルスクールで学び、美容師免許の取得を目指すことができる学校もあります。
スポール関連
通信制高校の中にはプロのスポーツ選手の講義やレッスンが受けられるところもあります。また、海外スポーツ留学も視野に入れて、英語の勉強に力を入れているところがほとんどです。
プログラミング関連
パソコンの基本操作からスタートし、プログラミング、ゲーム制作などを学べるコースを設けている通信制高校もあります。学校によって情報処理、ゲーム制作のいずれかがメインになっているので、入学前に確認することをおすすめします。
「高卒認定」にも「やりたいこと」にも役立つ通信制高校
いかがでしたでしょうか。「高卒認定をとりたい」「やりたいことを極めたい」など、通信制高校を目指す理由は人それぞれかもしれません。どのような理由であっても、通信制高校は必ず生徒1人1人にさまざまなサポートをしてくれることでしょう。
しかし、通信制高校で勉強するということは、自主性や自己管理能力が大いに問われる経験でもあります。先生や友達の目がなくても、きちんと勉強する習慣を身に着けなくてはいけません。
もちろん、すぐにそのようなことができる人ばかりではないでしょう。そんな時には、フォロー体制の整った通信制高校を選択するというのもひとつの方法です。学習計画などを一緒に練ってくれる通信制高校もあるので、そのような学校を選択してみてはいかがでしょうか。
何らかの理由で通信制高校を選択するというのは、多くの人とは違った道を行くことではあります。もちろん、困難もありますが、乗り越えた時には必ず他の人にはない強みにできるはずです。「なりたい自分」を手に入れるため、通信制高校で学び始めてみませんか?