「学校に行きたいのに登校できない」というのは、生徒本人もそれを見守る親御さんもつらいものです。
不登校そのものは病気ではありませんが、その背景にはもしかしたら次のような病気が隠れている可能性もあるので注意してください。
「どうしても学校に行かなければ」と無理をするのではなく、まずは治療が必要なケースといえます。
不登校の原因は病気ということも多い!
不登校の原因は起立性調節障害というケースが多い
起立性調節障害とは思春期特有の病気で、全国におよそ70万人の患者がいるといわれています。自律神経の不調により、起床時に脳に十分な血液が回らなくなり、激しい頭痛や吐き気を伴う病気です。
「朝、なかなか起きられない」「午前中はずっと調子が悪い」「立ちくらみや息切れを起こしやすい」「顔色が悪く青白い」といった傾向があるならば、起立性調節障害の疑いがあります。朝、なかなかベッドから出られないと、つい自分を責めてしまいますが、病気ならば仕方がないことです。一度、心療内科を受診してみてはいかがでしょうか。
対人恐怖症から不登校になることもある
対人恐怖症とは、自分が他人からどう思われているか強い不安を持ち、日常生活に支障をきたすレベルにまでなってしまう病気のことです。正式な病名ではなく、本来は社会不安症の一種という位置づけになっています。全日制高校や定時制高校のように集団生活を大前提としている学びの場では、対人恐怖症から不登校になってしまう例も少なくありません。
対人恐怖症では「多くの人たちの前で恥ずかしいことをしてしまわないか」というだけではなく「自分が他人を不快にしていないか」という点について病的な不安を持つことが特徴です。誰でも多かれ少なかれそのような感情はあるものですが、不安が高じて声や手足の震え、発汗、赤面、動悸、腹痛などを伴うならば対人恐怖症の疑いがあります。
病気ではないが発達障害も不登校の一因
発達障害は病気ではなく個性のひとつです。脳機能の発達の特殊性により、社会生活に対するハンディキャップを抱えている状態といってよいでしょう。何かしらの発達障害を抱えていると集団生活になじみにくいことも少なくありません。
発達障害にはいろいろなタイプがあります。とくに子どもの頃は見過ごされ高校生ぐらいになって発覚するのがアスペルガー症候群です。ずば抜けた集中力で成績優秀であるにもかかわらず「社会性がない」「まともな人間関係を築けない」「勉強しかできない」などといわれてしまうことも多々あります。発達障害による不登校の疑いがあるならば、3歳から17歳までを対象としている発達外来に相談してみるのもひとつの方法です。
不登校が原因で病気になることもある?
以上のように、不登校の原因となる病気にはさまざまなものがあります。これとは逆に、不登校から引き起こされる病気もあることはご存知でしたか?もし、不登校になって時間が経過しているようならば、次のような疾患に蝕まれていないか注意してください。
不登校が強迫神経症を引き起こす
現代の日本では高校進学率はほぼ100%となっています。そのため、高校に通わないでいると「道を外れてしまった」と、自分を責めたり、強い劣等感を抱いたりしがちです。そんな時に強迫神経症を引き起こしてしまうこともあります。
強迫神経症になると、何時間も手を洗っていたり半日ずっと入浴していたりというような異常な行動が見られるようになります。いずれも「駄目な自分を清めたい」という自責の念が根底にあります。早めに心療内科を受診するようにしてください。
不登校から家庭内暴力に至る例も
不登校の生徒は強い劣等感、未来への絶望感に苛まれる毎日といっても過言ではありません。苦しさに追い詰められて家庭内暴力に走る子どももいます。暴力をふるわれた家族も、ふるった子ども自身も傷つき、ますます自責と他責の念をつのらせて暴力が悪化し、警察沙汰になってしまう例も……。
家庭内暴力は病名ではりませんが、心療内科や精神科の治療によって沈静化させることは可能です。しかし、子どもをだまして病院に連れて行くようなことがあれば、かえって事態を悪化させてしまうでしょう。もし、治療をスタートするならば、何よりも本人の意志を尊重するようにしてください。
不登校からうつ病になってしまうこともある
うつ病というと大人の病気のようなイメージを持っている人も多いかもしれませんが、じつは子どももかかります。最近、無気力や不安による不登校が増えていますが、そういったケースでは、もともとうつ病傾向がゼロではありません。
自宅で何もしない生活を続けているうちに、本格的なうつ病になってしまい、長年ひきこもる人もいます。気分が落ち込むだけではなく、体重減少、不眠、過眠、疲労感、集中力の減退などが見られたら要注意です。強い罪責感から希死願望を抱くこともあるので、すぐに心療内科を受診してください。
不登校になったら通信制高校をおすすめする理由
不登校になった原因が病気ならば、無理に登校を再開するのではなく治療を最優先しなければいけません。また、不登校から何らかの病気を引き起こしている場合も同様です。しかし、だからといってまったく勉強をやめてしまうのは、かえって不安なのではないでしょうか。そんな時におすすめしたいのが、通信制高校です。
通信制高校なら病気の治療も十分にできる
通信制高校は基本的に毎日登校する必要がありません。週に1~2回程度の登校日が設定されているところが大半ですが、なかには年に4日ほど登校すれば卒業できる通信制高校もあります。療養期間をしっかりと確保したいならば、このような学校を選んではいかがでしょうか。
実際に、病気を治療しながら通信制高校で学んでいる生徒も大勢います。たとえば、起立性調節障害の生徒のために午後からの登校OKだったり、発達障害の生徒が周囲とスムーズにコミュニケーションできるように配慮してくれたりする通信制高校もあるので、ストレスなく過ごすことができるのではないでしょうか。
通信制高校なら高等学校卒業資格を取得できる
病気を抱えていても、高校中退になるのが不安で無理をして登校しようとしている人もいるかもしれません。確かに大学進学するにせよ就職するにせよ、高等学校卒業資格は取得しておきたいところです。そうとはいっても、無理がたたって進学も就職もままならなくなってしまうようでは本末転倒といえます。
高等学校卒業資格ならば、通信制高校で取得することもできます。卒業する頃には病気を完治できるように、しっかりと治療に励むこともできるでしょう。全日制高校を中退して通信制高校に切り替えることに抵抗を感じる人もいるかもしれません。しかし、できれば一日も早く通信制高校に編入することをおすすめします。
通信制高校なら同級生と同時に卒業することも可能
不登校のまま全日制高校に在籍していても留年を繰り返すばかりです。6年間しか在籍できないので21歳で高校中退というケースもあります。そこから通信制高校に入学し直すという方法もありますが、どうしても同級生に遅れをとってしまうことになります。
一方、留年する前に全日制高校を中退し、空白期間を作らずに通信制高校に編入すれば、同級生と同じタイミングで卒業することも可能です。これは「通信制高校は前の高校の在籍期間を含めて3年間在籍すれば卒業できる」によるものですが、たとえ不登校でも高校に在籍していたことが無駄にならないのは見逃せません。
通信制高校にはサポート校もある
不登校の経験があり、持病もあるとなると「通信制高校での勉強を続けられるだろうか」と、不安に思う人もいるでしょう。とくに、通信制高校での勉強は自主性や自己管理能力が問われるので「とても、やっていけそうにない」と、尻込みしてしまう人もいるかもしれません。
しかし、通信制高校には補修を専門とするサポート校が併設されていることもあるので心配ないでしょう。オープンキャンパスでサポート校の様子を見学することもできるので安心です。病気について配慮をしてくれて、無理なく勉強できるように学習計画を立ててもらうこともできます。わからないことも何でも質問できるので、勉強の遅れを取り戻すこともできるでしょう。
病気が原因で不登校になったら通信制高校がおすすめ
不登校の原因がじつは病気だった……というのは、本人はもちろんご家族もなかなか気づきにくいものです。いじめなどのこれといった問題もないのになぜか学校に行くことができない場合、じつは病気が隠れていたということも少なくありません。
また、不登校が原因で病気を引き起こすこともあります。いずれにせよ、優先すべきなのは治療です。無理をして登校を再開しようとするのではなく、全日制高校とは違う道を模索するのもひとつの方法です。
たとえば、通信制高校でも高等学校卒業資格を取得することはできます。全日制高校にこだわるあまりに結局卒業できなければ、最終学歴は中卒です。中卒では大学進学できませんし、就職先も限られてきます。とにかく高校を卒業することを目標とするならば、通信制高校に編入するのが賢い選択なのではないでしょうか。
ただし、通信制高校と一口にいってもさまざまな学校があります。まずは資料請求をして自分にぴったりの学校を選択してみてはいかがでしょうか。